【点乃のお話】カラスウリと舞妓の化粧下地|見えないところに宿る京の美

【点乃のお話】カラスウリと舞妓の化粧下地 ──見えないところに宿る京の美──
秋の山で赤う染まったカラスウリ。 あの実の中に、ぷるっとした透明の粘りがあるんどす。 昔の京の女性は、その粘りを白粉(おしろい)の下地に使わはったんえ。 自然さんの力って、ほんまにようできてますなぁ。
■ カラスウリの粘りは“天然の下地”どす
熟したカラスウリの実を割ると、ゼリーみたいな粘りが出てきますえ。 これが肌に薄く伸びて、乾くとすーっと膜をつくってくれます。 白粉をきれいにのせるための、大事なベースになってくれるんどす。
- なめらかに伸びる
- 乾くとさらっとして粉を受け止める
- 化粧崩れをふせぐ
- 自然のものやから肌にやさしい
昔の京の方は、この粘りをうまく使わはって、 白粉をきれいに仕上げてはったんやと思うと、なんや心が温もります。
■ 舞妓の白塗りは“下地”が命どす
白塗りいうたら華やかなイメージがありますけど、 ほんまは「塗る前の準備」がいちばん大切なんどす。 下地が整ってへんと、どんな白粉もきれいに乗りまへん。
◆ 点乃の下地の流れ
- お肌の水分や油のバランスを整える
- 鬢付け油(べんつけあぶら)を薄うのばす
- 白粉がすべるような土台をつくる
- その上に、そーっと白粉をのせる
白塗りは、見える部分よりも「見えへん準備」が勝負どす。 これは、カラスウリの粘りと同じ考え方やと思いますえ。
■ 京の美は“手間ひま”に咲くものどす
自然がつくった下地と、人が磨いた下地の技。 どちらも、いきなり美しくなるわけやありません。 見えないところを丁寧に整えてこそ、 ふっと花が咲くように美しさがあらわれるんどす。
「京の美しさは、見えへんところに宿る」 そんな古い言葉が、なんや心に沁みてきます。
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