鴨の親子と、ほどけるお出汁 ― 疏水べりの初夏便り|京都点心福

鴨の親子と、ほどけるお出汁 ― 疏水べりの初夏便り
おこしやす、点乃どすえ。
近頃の京都は、風の中にほんのりと、若葉の青い香りが混じるようになりました。
先日、仕込みの帰りにふらりと琵琶湖疏水を歩いておりますと、なんとも愛らしい「御一行様」に出会うたんどす。
それは、生まれたばかりのような小さな鴨の親子。
「ピピピ……」とでも言いそうな足取りで、おかはん(母鴨)の後を、小さな子鴨たちが一生懸命、行列を作って泳いでおりました。
振り返る母のまなざし
おかはんは、時折スウッと立ち止まっては、「皆、ついといいでるか?」と確認するように後ろを振り返ります。
その仕草がなんとも慈愛に満ちていて……。一羽でも遅れまいと必死にパタパタする子鴨たちの姿を見ていたら、点乃、胸の奥がじんわりと温かくなりました。
新緑の青もみじが鏡のような水面に映り、時折、風がその緑をさらさらと揺らします。
ただそこにある、命の営みと静かな風景。そんな時、ふと頭をよぎったのが、うちの「だし焼売」のことでした。
景色に馴染む、滋味深いお味
「なんでこんな時に仕事のことを」と自分でも可笑しくなりましたが、たぶん、あの鴨の親子に感じた「温かさ」が、お出汁のやさしいお味と重なったんやと思います。
一番だしをたっぷり含んだ焼売は、噛むとお口の中でじゅわっとお出汁がほどけて、心まで解いてくれるような気がするんどす。派手なご馳走やないけれど、一口食べると「ああ、帰ってきたな」と思えるような、そんな安らぎの味。
この穏やかな疏水の風と、職人が丁寧にお出汁を引いた焼売。どちらも「京都が大切にしてきた時間」が流れています。
お家で過ごすひとところに、少しだけ京都の初夏を感じていただけたら……。そんな思いで、今日もお店の暖簾を掲げております。
季節の移ろいとともに、皆様の心にも柔らかな風が吹きますように。
点乃。
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